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麻の歴史(前篇)

1.麻の歴史(前篇)
木や草にはその茎等から有用な繊維を採取することのできるもがあります。これを靭皮(じんぴ)植物といいますが、一般に「麻」と呼ばれる一群の植物は、靭皮繊維に分類されます。しかし靭皮繊維イコール麻というわけでなく、例えば、和紙原料などに使われる、こうぞ、みつまたといった植物も靭皮植物ですが、何故か麻とは呼ばれていません。「麻」という名称の由来には諸説あるようですが、ウィキペディアの麻(繊維)に関する解説によれば、「元来日本語で麻繊維といえば大麻から作られた繊維を指す名称であった。古代から日本に自生し繊維利用が盛んだった大麻を単に“麻”と呼称していたが、後に海外より持ち込まれた亜麻、苧麻(ちょま)などを含めた植物繊維全般をさして麻の名称を使うようになったため、元来の麻を“大麻(おおあさ、たいま)と呼称し、区分して使うようになった」とあります。
わが国で古代から、繊維として広く利用されてきたのは大麻と苧麻ですが、麻がいつ、どのようにして日本に渡来したのかは全く不明です。ただし縄文時代の極めて早い時期には既に日本の広い地域に生育していたことは確実の様で、縄文人が非常に古くから麻をいろいろな形で使用していたことが、
考古学的な発掘から明らかになっています。
麻が出土している遺跡はいくつかありますが、その一つとして、注目されているものに鳥浜貝塚遺跡(福井県三方町)があります。この遺跡からは六種類の縄が出土していますが、このうち二種類は麻で、縄文草創期(約一万年前)のものと報告されています。この事から、縄文時代という名称のもとになっている「縄」は麻縄ではないかと想像したくなります。
弥生時代に入ると、登呂遺跡等から麻と確認できる布片が出土しています。七世紀後半〜八世紀前半の成立とされる「万葉集」の中にも、麻を詠んだ歌が二十八首納められているそうです。日本人と麻との係わりは、伝統的な産業などを通じて数千年続いて来たと考えることができるでしょう。苧麻(ラミー)は、小地谷縮(おじやちちみ)、越後上布(じょうふ)等、高級麻織物の原料として現在も高い評価を得ています。 

中国の苧麻(ラミー)収穫風景
なお、大麻栽培は戦後原則禁止になりましたが、日本で伝統的に栽培されてきた大麻(英名 ヘンプ)は、幻覚成分の含有量が非常に少なく、使用用途は繊維産業に限られていたと考えられています。

2.麻の歴史(後篇)
亜麻(リネン)は人類が使い始めておよそ1万年になります。リネンは人類最古の繊維といわれ、紀元前8000年に世界文明の発祥の地チグリス・ユーフラテス川に芽生えたことを歴史学者が証明しています。
古代エジプトでは、リネン製のカラシリス(巻衣)が「神に許された」ものとして、神官の衣服や神事に用いられ、一般の衣服にも使われていたことが、古い文献から明らかになっています。また、ピラミッドから発掘されたミイラを包んでいた布もリネンです。先史時代のスイスでは湖上生活をしていた民族がリネンの衣料や船の帆やロープを作っていたことも明らかになっています。そして、それはそのままヨーロッパの文化に引き継がれ、永い歴史を築きあげ、その伝統を誇り続けています。
日本に初めて繊維用植物としてのリネンを紹介したのは、明治維新の立役者の一人、榎本武楊。彼は明治七年(1874年)、公使として赴任していたロシアよりリネン(亜麻)の種子を日本に送り、当時の北海道開拓長官、黒田清輝が札幌の屯田兵に栽培させたとの史実が残されています。それが日本におけるリネン栽培の始まりでした。

北フランスのリネン畑
その後、明治11年にフランス留学した内務省技師・吉田健作がリネンの紡績を学び、明治14年帰国後、リネン紡績の重要性を各方面に力説したことで、明治17年、日本初のリネン紡績会社が設立されました。
わが国でリネンが本格的に栽培されるようになったのは明治20年頃からで、最盛期であった第2次世界大戦中には、十勝地方を中心に北海道全域で約40.000haもの広大な土地で栽培が行われていました。当時は主に軍用品の素材として利用されていましたが、戦後は資材や衣料繊維へと利用が広がり、世界の一流ホテルや、皇室のテーブルクロス、シーツ等、格式と権威を重んじる場には必ずリネンが採用されるようになりました。またファッションシーンにも欠くことのできない素材ともなっています。
なお、現在「家庭用品品質表示法」で「麻」として表示できるのはリネンと苧麻(ラミー)だけであり、大麻(ヘンプ)は指定外繊維です。

3.麻素材の特徴・魅力
リネンとラミーはその原料となる植物が異なるので、それらから得られる繊維の物性も異なりますが、どちらも植物茎の靭皮部(茎の表皮)より得られる高強度、低伸度、高吸湿性、高吸水性等の天然セルロース繊維であって、他の繊維原料と比較した場合、その差は僅少であることも多いので「麻」に
統一して記したいと思います。
麻素材の大きな特徴にひとつは、非常に優れた“クール素材”であることです。よく「夏は麻」と言われるように、夏用衣料素材として麻は高い評価を得ています。
夏用衣料の条件として、最も評価される機能は、人体の放熱を調節して衣服内の環境を快適に保つことや、外部環境の変化が人体に与える影響を緩和することなどが考えられますが、そのための機能を列挙すると、
“熱伝導・放熱速度”
“水蒸気透過”
“換気・織物の張り” 
“通気性” 
“剛さ” 
“汗の吸収と蒸発”
“冷たさ・冷感”
等があげられます。ここでは具体的数値は記しませんが、麻は前記いずれの機能を併せ持つ、非常に優れたクール素材です。座布団カバーやシーツなど、肌に触れる部分に麻を使用した製品を利用したことがあれば、ひやりとする特有の心地よい感触を経験された方も多いと思います。汗を吸い、蒸発させてくれる麻素材は、高温多湿の日本の夏にきわめて適しているといえるでしょう。
麻織物は見た目にも風情ある織物です。その独特の光沢や風合いをいかした製品も数多くつくられています。
着心地などの総合的な判定については更に検討を要しますが、夏衣料として必要な性能についてマイナス面のないことが、麻が重用されている理由ではないかと考えています。
なお、前回リネンの歴史の紹介で、人類が使い始めて約1万年前と記しましたが、最近の調査により、さらに古い時代から利用されていた可能性が明らかになっています。グルジアの国立博物館や米ハーバード大などの国際チームが2009年9月に米科学誌サイエンスに発表したところによると、グルジア洞穴から3万2000〜2万6000年前と推定されるリネン糸(亜麻糸)の断片が発見され、後期石旧石器時代の狩猟採集生活がどのように発展したか解明する手がかりになると期待されているとのことです。(資料 日経09年9月23日)

麻の優れた吸水・発散性、質感をいかした製品
(帝国繊維株式会社のカタログより)

4.技術開発によって広がる麻の可能性
20世紀半ばにポリエステルが開発され、日本国内でも流通するようになると、麻メーカーでは麻の特徴を生かしたポリエステルとの混紡素材の開発が始まり、昭和30年代前半にポリエステル・麻混紡糸が世に送り出されています。その背景には、技術開発・革新に対する各メーカーのたゆまぬ努力がありました。
その一例として、ポリエステルの外周に麻の繊維が分布するような糸構造の「長繊維紡績」があります。繊維長76ミリ以上の繊維から造られた糸は、毛羽が少なく、平滑な表面を持ち、繊維の平行度も高く、その間隙が細く長いので、通気性、水の吸収、拡散に優れます。夏衣料に適した麻の特性をできるだけいかすよう工夫されたこの紡績方法により、さわやかな麻の感触とポリエステルの優れた適度な弾性を併せ持ち、シワになりにくく、洗濯にも型崩れしないウオッシャブル性を有した生地が開発され、ユニホームの素材として盛んに利用されるようになっていきました。

麻混紡素材を使用した製品
(帝国繊維株式会社のカタログより)
「混紡品」、すなわち異なる種類の繊維を組み合わせた生地の性質は、素材の混用率により変化します。その性質の変化は混用された繊維それぞれの性質(機能性、長さ、繊度)の比例平均に対してある場合は優勢であり、ある場合は劣勢になります。それ故混紡品の混用率の決定は性能の変化を熟知した上で、使用目的に対して最も総合性能を持つように決定しなければなりません。こうした知識も、長年の研究開発の蓄積があってこそえられるものだといえるでしょう。
ここ10年位の間には、合繊をはじめ、相次いで機能性繊維の開発が進み、技術の融合によって更に進化した機能、風合いのものが次々と生まれてきています。
私たち帝国繊維株式会社も、麻の優れた特性を持ちながらも、これまでとは「次元の違う機能」を有した素材を目標に日夜研究開発を行っています。
古くから人類に親しまれ、更新可能な資源である麻は、自然回帰やエコロジー、地球規模的問題にも柔軟に対応できる素材です。そんな「地球にやさしい」植物繊維が最適な衣料素材として位置図付けられ、その価値が見直されるよう、今後も更なる技術開発を続けて行きたいと思っています。
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